私たち「生成歴史学研究会」は、2019年の設立以来、様々な歴史書を読み続けてきました。各メンバーは個々の興味に基づいて様々な書籍を手に取りつつ、全体としての一貫したテーマを追求するため、定期的に読書会を開催しています。そこではテーマに基づいて選ばれた書籍を読み、その内容を元に議論を交わしてきました。
私たちはそれぞれが社会人でありながら、歴史に対する熱い関心から集まった個々人の集団であります。私たちはアカデミズムに対する直接的な貢献を目指す研究者というわけではありませんが、学問に向けた真摯な志向を持ち、私たちが生きる社会を理解するため、そしてそれを豊かにするために、歴史を学ぶことの意義を感じてこの活動を続けています。
2020年、私たちはデヴィッド・グレーバーとの出会いに大きな衝撃を受けました。彼の視点から得られる洞察に深く影響を受け、その後の私たちの関心は「中世」へと移行し、そして今、私たちの目は「東方」に向けられています。 私たちが「中世」に目を向けた背後には、グレーバーの洞察に起因する部分が大きいです。彼は現代を単に資本主義の時代とするのではなく、現代版の封建制度を見ていると指摘しました。この視点から見ると、現代の経済社会の仕組みは、中世の古典的な封建制度と本質的に変わらないものとなります。この気づきにより、私たちは目の前に広がる現代社会の多くが中世に由来していることを理解しました。
この理解から、私たちは自分たちの知識における中世の欠如を痛感し、中世についての学習を深めてきました。そして、その探求の終わりに、私たちは西洋中心的な視点からの歴史理解に過度に偏っていたとの反省を持ち、次なる興味の対象として「東方」を選びました。この旅のはじまりとする地点として、飛び地的にインドや中国、日本、アメリカへと進むのではなく、私たちの知の基盤となる古代ギリシアから出発することを選択します。
旅行計画
古代ギリシアを出発点として、アナトリア地方、アラビア半島、中央アジア、インド、東南アジア、中国、日本の方へと向かい、その後そのままベーリング海峡を越えてアメリカ大陸へといたる東方を目指していきます。この旅では時系列の基準を廃して、東方へと向かうベクトルと地域を基準に、時代にとらわれない自由な旅を目指します。現実の旅では不可能なことを、心の旅で実現し、旅の道づれとして共に歩んでいきましょう。
かつてマルコ・ポーロ『東方見聞録』とイブン・バットゥータ『三大陸周遊記』が、それぞれ25年間と30年間の月日をかけて東方を目指したように、現代で私たちもそれほどの月日をかけて東方を目指したいと思います。
読書会の記録
- 納富信留『ギリシア哲学史』(2022-2023年)
- 坂口ふみ『〈個〉の誕生』(2023年)←開催中
- 以降未定・候補
- 野田恵剛『原典完訳 アヴェスタ: ゾロアスター教の聖典』
- ジェームズ・C・スコット『ゾミア―― 脱国家の世界史』
副読本
読書会では精読しているため、それとは別に本テーマを追求するにあたって個々人で事前に参考までに読んだ本をまとめます。
- ピーター・フランコパン『シルクロード全史(上)(下)』
- 羽田正『興亡の世界史 東インド会社とアジアの海』
- 大角修『日本仏教の基本経典』
- 廣岡正久『ロシア正教の千年』
- ルイス・ハンケ『アリストテレスとアメリカ・インディアン』
- 山下博司『古代インドの思想: 自然・文明・宗教』
- 青木健『ゾロアスター教』
- 青木健『ペルシア帝国』
- 青木健『マニ教』
- 青木健『アーリア人』
- 青木健『古代オリエントの宗教』
- 林俊雄『興亡の世界史 スキタイと匈奴 遊牧の文明』
- デヴィッド・グレーバー, デイビット・ウェングロフ『The Dawn of Everything: A New History of Humanity』
- デヴィッド・グレーバー『価値論』
- ウィル・デュラント, アリエル・デュラント『歴史の大局を見渡す──人類の遺産の創造とその記録』
- 高野秀行, 清水克行『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』
順不同